保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。|第47回|広報してくれないところもあるの?──就学援助⑥|栁澤靖明
第47回
広報してくれないところもあるの?
──就学援助⑥
栁澤靖明
栁澤靖明
前回の掲載は、2023年7月だったので、また1年以上のブランクを経て就学援助が帰ってきました。就学援助はシリーズ6作目になります。ボクの大好きなドラゴンボールなら、「元祖」「Z」「GT」「改」「超」「DAIMA」と6作なので肩を並べています! っていう異次元シリーズとの張り合いは置いておいて⋯⋯、就学援助シリーズは今回がラストです。
とりあえず、恒例のふり返りをしておきましょう。①「就学援助を利用したいときに(第4回)」、②「だれでも申請できますか?(第8回)」、③「援助額ってみんな同じじゃないの?(第11回)」、④「利用できる基準は?(第22回)」、⑤「タイミングのよい申請時期は?」(第31回)に続く今回は、申請の方法やその窓口が自治体によって変わってくるという話です。それに加えて制度周知の案内方法やその時期もさまざまなんですよねー。利用者にとっての最善を考えていきましょう。
それでは、最後の勉強を進めていきましょうか。
♪ いっしょにLet’s study about it. ♪
もちろん最後も法律の条文はおさえておきますね。
就学援助制度のアウトラインを定めた条文として、「経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」(学校教育法第19条)がありました。家庭の収入が少ないため、義務教育を思いどおりに受けることが難しいとされる子どもの保護者に対して、市町村は必要な援助を与えなければならない=義務があるわけです。
それでは、はじめに案内方法の現状を確認してみましょう。埼玉県川口市では「就学援助」というウェブページを作成し、周知につとめています。ほかにも、年度初めの4月に「就学援助のお知らせ」という色紙にモノクロで刷ったペーパーを全家庭に配付し、それと合わせて「広報誌」でも案内しています。また、学校給食費の未納がつづいている家庭には、未納通知とともに個別で案内もしています。このていどの取り組みが全国的に平均なのか、優秀なのかという優劣の判断はできませんが、おそらく劣っていることはないと思います。
ほかの自治体だと、年に数回ペーパーでお知らせしていたり、テレビコマーシャルを製作している場合もあります。テレビCMは、沖縄県が知られています(沖縄県ウェブサイト「就学援助のCMが視聴できます」)。逆にウェブサイトを探しても情報がみつからない場合もあります。
少し古い本ですが、『知られざる就学援助』(学事出版、2009年)に「制度広報をしない」「制度案内書を配布しない」「就学援助費受給率」のデータが掲載されていて、それを下表のように合成してみました。パッとみてわかるように、人口が多いほど「広報をしない」&「案内書を配布しない」という自治体の数は少ないです。その反面で、逆に多くなるのが「援助費受給」者です。あたりまえですが、知らせていない自治体より知らせている自治体のほうが就学援助利用率は高いということです。
でも、たまーに聞くんです。「広報したら申請が増えて、自治体の財政を逼迫させる」。そんな理由から〈黙っとけ〉的な指令が、あるところからくだるとかどうとか。やはり、生活保護と近い問題が隠れているようです。
次に、申請の方法とその窓口です。まず、申請用紙は一般的に学校の事務職員を訪ねるともらえます。そして、そのまま申請までいける場合もありますが、学校では受けつけていない自治体もあります。その場合は、教育委員会事務局ですね。また、どちらでもOKという自治体も多いようです。このパターンが保護者にとってはベストなんでしょうね。役所はちょっとハードルが高いし、学校のほうがなんとなく安心というひともいるでしょう。あとは、所得証明の添付が必要な自治体もありますし、役所でとってそのまま申請できたら負担も減りますね。
最近では、だれにも会わないで申請ができる自治体も出てきました。自宅にいながら申請できるのです。たとえば、北海道札幌市のウェブサイトには「電子フォーム」という窓口があり、所得証明の添付を省くこともできます。就学援助DXの時代ですね。
シリーズ就学援助としての結論は、お住いの自治体でもかならず就学援助を利用することはできるので、情報を徹底的に調べる! これに尽きますね。とりあえず、今回でシリーズは終わりですが、大きな制度変更や社会的な話題になったら単発で書くかもしれません。では、また。
栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
埼玉県の小学校(7年)と中学校(13年)に事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして現代社会へ情報を発信。研究関心は、家庭の教育費負担・修学支援制度。具体的には、「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などをライフワークとして研究している。「隠れ教育費」研究室・チーフディレクター。おもな著書に『事務だよりの教科書』『学校事務職員の基礎知識』『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『教師の自腹』(東洋館出版社)、『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、日本教育事務学会「研究奨励賞」)など。