保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。|第4回|就学援助を利用したいときに |栁澤靖明
第4回
就学援助を利用したいときに
みなさん、こんにちは。今回の質問は「就学を援助してくれる制度があるって聞いたんですけど、どんな制度か詳しく教えてちょうだい」っていう内容です。いわゆる「就学援助」という制度のことですね。この制度はね、なかなか奥が深いんですよ──。だから、連載のなかの連載として何回かに分けて説明しますね。
今回は、「就学援助」総論として制度のアウトラインを紹介します。
♪ いっしょにLet’s think about it ♪
アウトラインをといっても何から説明していきましょうか。ちょっとカタイ話になりますが、30秒だけ時間をください。どうしても法律を紹介したいんです。ひとつの条文だけお付き合いください……ここで読むの止めないでくださいね(笑)。
学校教育法の第19条に「経済的理由によつて、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」という条文があります。
これが「就学援助」を実施している根拠です。少しだけ噛み砕いて説明すれば、〈家庭の収入が少ないため、義務教育を思い通りに受けることが難しいとされる子どもの保護者に対して、市町村は必要な援助をする義務がある〉という条文です。
──はい、難しい話は終わり。
どうしても最初に伝えたかった理由は、国会で議論されてつくった〈法律〉に書いてある制度ってとこなんです。条件さえ合えば、だれでも利用できるっていうことを覚えておいてください。だれが制度を利用してもいいし、制度を利用する可能性はだれにでもあります。
それではどんな援助をしてくれるのでしょうか。実際に制度を運用するのは住所がある市町村です。そのため、それぞれの自治体で内容が若干ちがってきます。ここでは、代表として日本一の人口を誇る政令指定都市「横浜市」に登場してもらいます。
横浜市では、「就学援助制度のお知らせ(令和2年度)」という保護者向けの手紙を教育委員会が作成し、Webサイトで発信しています。──ということなので「詳しくWebで!」って書いたら、この連載は不要ですね。要点だけかんたんに説明しましょう。
まず、援助してくれる費用を抽出しておきます。ちょっと理解しづらい単語もあると思いますが、説明を加えますのでそのまま転載しますね。横浜市の場合、学用品費等(鉛筆やノート、ドリルや参考書、PTAや生徒会費など)、入学準備費(制服等の周辺やカバンなど)、修学旅行などの校外活動費、クラブ活動費(部活動を含む)、卒業アルバム代、学校病医療費(むし歯や中耳炎などの治療費)、それに加えて学校給食費が援助されます。これだけみると、学校でかかるお金を幅広く援助してくれそうな制度ですね。
それでは、申し込みの条件に移りましょう。
冒頭で「条件さえ合えば、だれでも利用できる」と書きました。その条件とは、基本的に所得額の基準です。ある一定の所得に満たない場合は認定されるという制度です。職場からもらえる源泉徴収票や、確定申告書などを手元に用意しましょう。
横浜市は、世帯の人数に対応した世帯の所得合計が示されているため、申し込みをする立場からも基準がわかりやすいですね。かならずしもこのように示されているわけではないため、所得なのか収入なのか、あるいは別の基準があるのか、よく確認しましょう。
めったに見かけませんが「所得割額」(意味がわからなくてもだいじょうぶ、所得証明証を役所で取ると書いてあります)や「収入のめやす」のみが書かれている場合もあるかもしれません。
続いて、実際の申し込み方法です。「いざ、鎌倉!」ほど気合いを入れる必要はありません。
まずは、申請書をゲットするために学校へ電話しましょう。電話する時間がなかったら連絡帳や生活ノートでもいいです。「就学援助の申請書をください」と書けば、子どもを通じてもらえます。子どもに知られたくない場合は、封書を用意してもいいと思います。気軽に事務職員or担任等まで連絡ください。市町村によってはWebサイトで申請書がダウンロードできる場合もあります。「〇〇市_就学援助」のように、お住まいの自治体名と組み合わせてググってみてください。
申請書さえ手に入れば、あとはかんたんです。必要事項を書いて事務職員まで提出してください(担任経由、郵送など基本的には届けばどんな方法でもOKだと思います)。
最後に、あらためて理屈的なことでまとめますね。就学援助制度は法律に基づき市町村が実施している事業です。必要なひとが必要なときに利用できる行政サービスと考えてもいいと思います。利用できそうだと少しでも思ったら申し込んでみてください。申請は無料です。
今回は、このへんで終わり。就学援助制度と制度利用者としての保護者をつなぐ課題や問題、疑問が生じそうな点なども、今後もこの連載で扱っていきたいと考えています。
栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
埼玉県の公立小中学校(小・7年、中・12年)で事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外に開く」をモットーに、事務室だより『でんしょ鳩』などで、教職員・保護者・子ども・地域へ情報を発信し、就学支援制度の周知や保護者負担金の撤廃に向けて取り組む。ライフワークとして、「教育の機会均等・無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究。おもな著書に『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、2016年、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年、日本教育事務学会「研究奨励賞」)など。