保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。|第13回|ウィンドブレーカーまで指定するの?|栁澤靖明

保護者の疑問にヤナギサワ事務主査が答えます。 栁澤靖明 学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

学校にあふれるナゾの活動、お金のかかるあれこれ⋯⋯、「それ、必要なの?」に現役学校事務職員が答えます。

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第13回
ウィンドブレーカーまで指定するの?

 みなさん、新年あけましたね。今年もどうぞよろしくお願いします。新年早々に誕生日を迎えたヤナギサワです。この機会にプレゼントの送付を考えているひとは編集部までお願いします。いくら『隠れ教育費』の著者だからって、体操着やジャージなどは不要です(笑)。──ということで、今月は、体操着、ジャージ、ウィンドブレーカーというものについてとり上げます。

 まず、体操着です。小中学校では、学校指定品の購入が一般的ですね。ちなみに、幼稚園でも指定品の購入はありますが、保育所ではあまり聞かないのはなぜでしょう? 文科省と厚労省の違いでしょうかね(たぶん、幼稚園は「園服」に引っぱられているんでしょうね)。

「体操着」とはいうものの、体育の時間以外でも着ます。たとえば、泥だらけになりそうなときや墨をつかうときなど、小学校では着替えることが多いです。つまり、「汚れてもよい服=体操着」という認識なんだと思います。

 中学校では、体育の時間を含めて、登下校以外の時間を「体操着+ジャージ」(ここでは、「体ジ」と呼びましょうか)で過ごす学校も多いです。小学校と同様に、「汚れてもよい服」という感覚で、掃除の時間や実技科目の時間も「体ジ」スタイルですね。

 林間学校など、宿泊行事の部屋着やパジャマとしても「体ジ」が指定されているなんて話をよく聞きます。その時期にあわせ、わざわざ「体ジ」の買い増しを学校がうながすこともあります。くわえて、学年ごとに決められた学年カラーという縛りもあります。小学校では、上履きや水泳帽くらいかもしれませんが、中学校だと「体ジ」にもおよび、きょうだいがいてもリユースがむずかしくなってしまいます。

 もうひとつ、部活動で「おそろい」を購入することが多いウィンドブレーカー問題があります。しかし、学校が斡旋した「おそろい」が必要なのか。いや、各自持参でもよくないか。室外での活動のない「文化部」であっても寒いのか。運動部のノリに合わせているのか。──ウィンドブレーカーという「防寒着」の深い闇は、生徒指導にもおよびます。それは、のちほど。

さて新年一発目の発問です! みなさんで声を合わせて……


♪ いっしょにLet’s think about it. ♪


「体ジ」+ウィンドブレーカーに共通していること、それは「『なんのためにそれを指定するのか』という保護者の疑問をクリアにできるか」という問題でしょう。

 体操着には、「汚れてもよい」ことのほかに「動きやすい」という効果もあるでしょう。日常着や制服との差別化を図れるため、たしかに有効です。ただ、いまは安価な速乾性Tシャツなども近所で買えます。学校で素材や価格、デザインなどを検討する時間まで使って指定する意義が問われる時代だと思います。検討の結果、透けやすい白をチョイスしていることも、いかがなものでしょうか。

 ジャージも体操着と同様ですね。3,000円くらいならまだしも、1万円程度のものを指定されるなら、好きなものを買ってあげたい。これが親の気持ちです(わたし、中2の子持ち)。しかも、わが子のジャージは重くてかさばるんです(わたし、毎日たたんでいます)。また、奇抜な色がチョイスされていることもありますよね(わたし、高校時代のジャージがビビッドピンク)。価格、素材、色──いろいろ疑問はありますが、今回は学年カラーについて指摘しておきます。

 学年で色を変える──その理由の多くは、「パッと見て、何年生なのか判断するため」なんですね。じゃあ、どうして「パッと見」が必要なのか──。ここに「生徒指導」がからんできます。しかも、完全に学校側の都合です。気になる子どもがいたとき、すぐに学年を特定したいから……。中学校って学年文化が強いので、学年さえ特定しておけば、学年の職員がなんとかするという感覚があります。ホント、子どもには関係ないことなのに、好きでもない色のジャージで3年間過ごすことになるし、きょうだいに使いまわすことも容易ではないので、保護者にも優しくありません。

 ちなみに、私の勤務校は全学年統一です。とくに問題は聞きませんし、きょうだい以外でもリユースができるため、経済的負担もあるていど軽減されています。販売店だってロットが大きいほうが安くできるし、在庫も効果的に管理できると思います。あれ、Win-Winですね。

小学校の校章つき指定体操着

 つぎは、問題のウィンドブレーカーです。体感温度なんて個人差があります。真冬でも半袖・短パンの小学生はいますよね。これこそ、ほしいひとが用意すればよいものです。そう、学校や部活動が「おそろい」を斡旋購入させる必要性はありません。いや、希望制になっているよ、という学校は多いと思いますが、同じ部活動の仲間・先輩も着ている状況であれば、同調圧力とまではいかなくてもプレッシャーは感じるかもしれません。

 さらに、学校行事(たとえば、マラソン大会など)でも「部活動で購入した防寒着なら着用OK」という指定がされることもあります。あくまで防寒着ですし、用途もかぎられます。安易に学校指定品としての地位を築かせるべきではないと考えます。しかも、ウィンドブレーカーは「体ジ」に比べて費用負担も大きいし、就学援助の対象ともいえません。

 このあたり、学校現場の改革意識は鈍いです。しかしながら、第3回「制服じゃなきゃダメですか?」でも書いたように、そのもののあり方が問われている時代ですし、その結果として文科省も、学校へ校則の見直しを通知しています。いま、コロナ禍も後押しとなり、あたりまえを見直すこと、ニューノーマルの波が押しよせています。この機会に学校指定品もニューノーマルへの検討が必要です。

 学校指定品の問題は、「体ジ」+ウィンドブレーカーだけではありません。費用を負担する保護者、着衣する子どもたちの声が、改善に向けた大きな後押しとなります。第12回「保護者アンケートにどう答えたらいいの?」──に書いたように、まだ間に合います(たぶん)。「『隠れ教育費』学校指定の学用品 疑問を感じたときは」(日経WOMAN記事)もよかったらご覧いただき、学校へその声を届けてください。

 

栁澤靖明(やなぎさわ・やすあき)
埼玉県の公立小中学校(小・7年、中・12年)で事務職員として勤務。「事務職員の仕事を事務室の外に開く」をモットーに、事務室だより『でんしょ鳩』などで、教職員・保護者・子ども・地域へ情報を発信し、就学支援制度の周知や保護者負担金の撤廃に向けて取り組む。ライフワークとして、「教育の機会均等・無償性」「子どもの権利」「PTA活動」などを研究。おもな著書に『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、2016年、日本教育事務学会「学術研究賞」)、共著に『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年、日本教育事務学会「研究奨励賞」)など。